委員会

呼吸器グループ

委員長よりご挨拶

このたび2025年6月より呼吸器グループ長を拝命致しました、静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科の釼持広知(けんもつ ひろつぐ)と申します。
WJOGの呼吸器グループは、これまでに数多くの臨床試験を行い、呼吸器腫瘍における多くの重要なエビデンスを創出してきた、伝統ある研究グループです。このような歴史あるグループの長を務めることとなり、身の引き締まる思いとともに、大きな責任を感じております。
呼吸器腫瘍の領域には、早期がんから進行がんに至るまで、いまだ数多くの未解決のクリニカルクエスチョンが存在しております。我々の使命は、質の高い臨床試験を通じて、これらを解決し、患者さんへよりよい医療を届けることにあります。諸先輩方が築いてきたWJOGの精神を受け継ぎながら、より多くの施設・研究者の皆様にご参画いただける、より魅力ある臨床試験グループを目指し、さらなる活性化を図ってまいります。医師主導治験を含めた臨床試験の実施数の増加、リアルワールドデータの収集および利活用の推進とともに、公的資金を獲得できる新たな第Ⅲ相試験を計画・完遂していきたいと思います。
また、WJOGの呼吸器グループは常に門戸を開いており、若手からベテランまで、新たな会員のご参加も心よりお待ちしております。是非、一緒に新たなエビデンスを作っていきましょう。

釼持 広知
呼吸器委員会 委員長

釼持 広知

活動概要

WJOG呼吸器グループは、2000年にWJOGの前身となるWest Japan Thoracic Oncology Group(WJTOG)が発足した当初より、肺癌を中心とした胸部悪性腫瘍に関連した多くの臨床研究を行ってきております。切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準治療の確立につながった第Ⅲ相試験となるWJTOG0105試験や、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するEGFR-TKIを標準治療として確立することに寄与したWJOG3405試験など、世界における標準治療の確立につながる研究を多く行ってきました。

現在のWJOG呼吸器グループは、全国100以上の施設で構成され、今も多くの臨床試験および医師主導治験が進行中です。具体的な活動は、1か月に1回のアドバイザー会議および、年に4回程度の呼吸器グループ会議を開催し、日々新たな臨床試験の発案・検討・実施しております。

近年、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの様々な新規治療薬の開発により、胸部悪性腫瘍に対する治療は過去に例のない速さで進歩しています。WJOG呼吸器グループでは、この大きく変わる環境のなかで更なる胸部悪性腫瘍の患者さんにより良い治療を提供していくことを目指して今後も活動を続けていきます。

呼吸器外科部会の紹介

近年、手術可能な非小細胞肺がんにおける周術期治療に、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬が承認され、非小細胞肺がんにおける周術期治療は大きな転換期を迎えています。さらに、進行期の非小細胞肺がんにおいても、オリゴ(病巣数の少ない)転移やオリゴ増悪などの新たな病態が提唱されており、局所制御を目的とした手術が重要な位置を占めるようになっています。 これらの状況から、非小細胞肺がんに対する全身的治療である薬物療法と、局所治療である放射線や手術を組み合わせた集学的治療の重要性がますます高まってきており、2022年に呼吸器外科部会が立ち上がりました。

活発な意見交換会や勉強会を行っており、縮小手術を始めとした低侵襲性を考慮した外科治療の開発や、新たな周術期の集学的治療の開発する準備をおこなっており、患者さん、医療現場のニーズに応えられる臨床研究の立ち上げ、実施を推進しています。

また、我々は、ここ数年カナダやヨーロッパのグループと共同して、術後補助療法の開発に関与してきました。この経験を活かして、欧米のみならずアジア・パシフィックのグループ、施設との共同研究も進めて、日本の患者さんのみならず世界中の肺がん患者さんにより良い治療、診断技術を提供できるように尽力したいと考えています。

WING(WJOG呼吸器グループの若手会)のご紹介

WJOG young Investigators club for Next Generations (WING)は、WJOG呼吸器グループの若手会として2018年に発足しました。毎年、WJOGの中核を担うご施設の先生方のみならず、これからWJOGの中核を目指し頑張りたい野心溢れる先生まで幅広く募集し、任期は3年間です。現在のメンバーは、指導的立場にあるWING Steering Committeeを含め、計60名前後の呼吸器内科医・腫瘍内科医、呼吸器外科医、放射治療医で構成されています。

WINGは、臨床試験の立案・運営に積極的にかかわっており、これまでに関わった研究は30以上にのぼります。また、臨床試験への参加、症例登録の活性化、呼吸器グループ会議やアドバイザー会議への出席および発言、ASCO/ESMO virtual plenary抄読会をはじめとする様々な勉強会の企画・開催などを通じて、WJOGの活性化に寄与しており、いまや呼吸器グループの中核を担う存在となっております。

WINGメンバーで切磋琢磨し、 今後のWJOG呼吸器グループの発展と、より良い臨床研究に寄与できるよう日々努めています。

所属メンバー

  • Hirotsugu Kenmotsu
    委員長

    Hirotsugu Kenmotsu

    釼持 広知

    静岡県立静岡がんセンター
    呼吸器内科

  • Hidetoshi Hayashi
    副委員長

    Hidetoshi Hayashi

    林 秀敏

    近畿大学病院
    腫瘍内科

  • Hiroaki Akamatsu
    副委員長

    Hiroaki Akamatsu

    赤松 弘朗

    和歌山県立医科大学附属病院
    呼吸器内科・腫瘍内科

  • Yasuhiro Tsutani
    副委員長

    Yasuhiro Tsutani

    津谷 康大

    近畿大学病院
    呼吸器外科

役職氏名施設名診療科名
アドバイザー / 理事長山本 信之和歌山県立医科大学附属病院呼吸器内科・腫瘍内科
アドバイザー / WING代表池田 慧関西医科大学附属病院呼吸器腫瘍内科
アドバイザー岡本 勇九州大学病院呼吸器内科
アドバイザー倉田 宝保関西医科大学附属病院呼吸器腫瘍内科
アドバイザー佐藤 悠城神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科
アドバイザー菅原 俊一仙台厚生病院呼吸器内科
アドバイザー立原 素子神戸大学医学部附属病院呼吸器内科
アドバイザー坪井 正博国立がん研究センター東病院呼吸器外科
アドバイザー古屋 直樹聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科
アドバイザー宮田 義浩広島大学病院呼吸器外科
アドバイザー横山 俊秀倉敷中央病院呼吸器内科

代表的な実績

WJOG6410L Hirohito Tada, et al.Randomized Phase III Study of Gefitinib Versus Cisplatin Plus Vinorelbine for Patients With Resected Stage II-IIIA Non-Small-Cell Lung Cancer With EGFR Mutation (IMPACT). J Clin Oncol . 2022 Jan 20;40(3):231-241.
J-SONIC Kohei Otsubo, et al.Nintedanib plus chemotherapy for non-small cell lung cancer with IPF: A randomized phase 3 trial. European Respiratory Journal(Accepted on March 18, 2022)
WJOG8715L Hiroaki Akamatsu et al.Efficacy of Osimertinib Plus Bevacizumab vs Osimertinib in Patients With EGFR T790M–Mutated Non–Small Cell Lung Cancer Previously Treated With Epidermal Growth Factor Receptor–Tyrosine Kinase Inhibitor West Japan Oncology Group 8715L Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2021; 7(3):386-394
WJOG5610L Takashi Seto et al.Randomized Phase III Study of Continuation Maintenance Bevacizumab With or Without Pemetrexed in Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer: COMPASS(WJOG5610L). Journal of Clinical Oncology 38(8):793-803, 2020

実施中の臨床試験

第II相AGEHA study (WJOG17323L)

Uncommon EGFR 遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌に対するアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法とアファチニブの有効性を比較するランダム化第II相試験

  • 目標症例数 : 70例
  • 登録期間 : 2025年12月〜2027年12月
宮脇 太一
順天堂大学医学部附属
順天堂医院
呼吸器内科
Point
非小細胞肺がんの約3~6%(EGFR変異陽性例の10~15%)を占める「Uncommon変異」や「Compound変異」は、希少なドライバー遺伝子変異です。現在、これらの遺伝子変異を有する患者さんには、アファチニブ(ジオトリフ®)やオシメルチニブ(タグリッソ®)といった分子標的薬が有効で標準治療とされています。しかし、約8~10カ月で「耐性」が生じることが課題となっており、より長く効果が持続する治療法の開発が世界的に熱望されています。
新たな有力候補として注目されているのが、アミバンタマブ(ライブリバント®/リブロファズ®)とラゼルチニブ(ラズクルーズ®)の併用療法です。過去の比較的小規模な試験では、未治療の患者さんにおいて耐性までの期間が大幅に延長したことが報告されています。一方で、点滴に伴う過敏反応(インフュージョンリアクション)や皮膚毒性、浮腫などの副作用が強く認められることも報告されており、既存治療との比較検討が必要です。
本試験では、未治療の患者さんを対象に、アミバンタマブとラゼルチニブの併用療法と、アファチニブの有効性を比較する多施設共同第II相試験を実施します。この研究を通じ、Uncommon/Compound EGFR遺伝子変異という希少な遺伝子変異を持つ患者さんに対する「世界における新たな標準治療」の確立を目指しています。

第III相J-OLIGO (WJOG20924L)

IV期オリゴ転移の非小細胞肺癌患者に対する免疫チェックポイント阻害薬と局所治療を含む集学的治療の有効性を検証する第III相試験 (山本小班インターグループ試験)

  • 目標症例数 : 一次登録150例、二次登録100例
  • 登録期間 : 2025年10月〜2029年10月
宮脇 太一
順天堂大学医学部附属順天堂医院
呼吸器内科
Point
オリゴ転移は、局所進行癌と全身に広く転移した状態の中間の病態と考えられています。標準治療に手術や放射線治療などの局所治療を追加することで、予後の改善が期待できる集団として、欧米を中心に治療開発が進められてきました。非小細胞肺癌においては、一般的に「3〜5個以内の少数転移」を伴う状態で、かつ原発巣を含む全ての病変に対して局所治療が可能であることが、オリゴ転移と定義されるようになっています。
これまで、局所治療追加の有効性を示唆する臨床試験が複数報告されてきましたが、その多くは小規模な検討に留まっており、なかには有効性に対して否定的な結果も示されています。このような背景のもと、WJOG(西日本がん研究機構)では、オリゴ転移を伴うIV期非小細胞肺癌患者を対象に、局所治療と免疫チェックポイント阻害薬を含む集学的治療の有効性を検討する第II相試験(WJOG11118L/TRAP-OLIGO)を実施しました。
本試験(第III相試験)は、その結果に基づき、オリゴ転移に対する集学的治療の有効性を検証するために計画されました。本試験を通じて、オリゴ転移を伴うIV期非小細胞肺癌患者さんに対する、より有効な標準治療の確立を目指しています。
なお、本試験はWJOGだけでなく、本邦における主要な臨床試験グループとの共同実施であり、All Japanの体制で試験を推進しております。

第III相STEP UP trial (WJOG16923L)

臨床病期IA3期の肺野末梢充実型非小細胞肺癌に対する肺葉切除と区域切除のランダム化比較第Ⅲ相試験

  • 目標症例数 : 520例
  • 登録期間 : 2024年01月~2029年01月
上垣内 篤
広島大学病院
呼吸器外科
Point
最近発表された大規模臨床試験(JCOG0802/WJOG4607L)により、肺野末梢の2 cm以下の肺癌に対しては、肺の切除範囲が少ない「区域切除」が従来の標準手術である「肺葉切除」と比較して予後が劣らないばかりか、優れることが示されました。肺癌以外の他病死が「区域切除」で少なく、肺の温存により身体への負担が軽減され、予後の向上に貢献したと考えられています。さらに、悪性度が高いと考えられている薄切CT上の充実型肺癌に対しても区域切除による生存利益を認め、2cmを超える充実型肺癌にも区域切除を適応できる可能性が示唆されています。一方で区域切除では局所再発のリスクが高まる可能性もあり、区域切除と肺葉切除のどちらが有効な治療法かは不明です。そこで本試験は臨床病期IA3期(2 cmを超え3 cm以下)の肺野末梢充実型非小細胞肺癌の患者さんを対象として、区域切除の臨床的有用性を、標準治療である肺葉切除と比較し評価することを目的としています。本試験の結果により、早期肺癌の患者さんに対し、より有効で身体への負担が少ない手術法が確立されることを期待しています。