
いよいよ念願が叶い、肺癌を中心とする胸部腫瘍の臨床研究組織WJTOGが発足致しましたが、その母体は1991年に結成されました西日本肺癌化学療法研究会であります。この組織は西日本各地の病院に勤務し、肺癌の化学療法に関心を抱く内科医師の集まりでした。
この研究会に参加した医師達の一部は厚生省から国立がんセンターを経由して補助される研究費に依存するグループ(Japan Clinical Oncology Group,通称JCOG)に属しており、研究会開催のテーマによってはその補助を受けていましたので、一時は厚生省班会議の小班との位置づけでありました。しかし、純粋に肺癌の化学療法治療成績を向上させることに期待を抱いている内科医は束縛のない自由な発想に基づく臨床武験への願望と、その発想のpriorityを尊重する組織の確立を目指しておりましたので、運営費用の殆どを自らが勤務する病院の施設会費として徴収されたお金を充当し、ある時は自腹を切るという、まさに手弁当の活動を開始したわけです。そして、過去約10年の間にJCOGスポンサーで非小細胞肺癌患者III期症例320例による化学療法と放射棟療法のタイミングの無作為化比較試験を僅か2年3ヶ月で完遂し、さらに塩酸イリノテカンの市販後調査を390例の3群無作為化比較試験で成功裏に終了しました。こうした実績から外国からも高い評価を受けており、JCOGが東京にある国立がんセンターに属する組織であることを知る米国の友人達は、日本の肺癌化学療法の成績を述べると、WestかEastかと聞いて来るまでになりました。
しかし、私たちが夢みていたのは、米国のECOGやSWOGなどに比肩する腫瘍研究グループの確立でした。それらもNPO組織であり、実績を示すことで経済基盤が確立し、それによりさらに充実した研究成果を生み出しているという良好な循環が認められております。
私たちは一昨年からNPOとしてのWJTOGを組織する検討を開始し、一部会員の献身的な努力で平成12年12月12日に大阪府よりNPOとして認知されたわけです。WJTOGはその名称通り研究対象が未だ胸部腫瘍に限定された組織ですが、将来は前述した日本のECOGやSWOGとして成長することを念願しております。当面、WJTOGは肺癌治療の臨床試験を中心とした臨床研究の充実、臨床腫瘍医の育成、肺癌患者さんへの教育広報などを目指して活発なボランティア活動を展開するつもりです。
近年はエビデンスに基づく医学(EBM)か尊重されますが、それは全て良質な臨床試験に基づいております。したがって、多くの肺癌患者さんにご協力頂く臨床試験は医学で最も大切な臨床研究でなければなりません。WJTOGは将来の肺癌撲滅を目指して患者さんのために活動することを誓います。