
2023年5月から5代目理事長に就任いたしました山本信之と申します。よろしくお願いい申し上げます。WJOGは、2000年にNPO法人格を取得してから20年以上の歴史をもつ日本屈指の臨床試験グループです。この間、多くの改革を経て現在の規模に成長してきました。例えば、前理事長の中川和彦先生の時代には、医師主導治験を実施するための積極的な基盤整備を行い、がんの種類に関わらない臨床試験を実施するチーム(バスケット委員会)を新たに設置しました。これによって、WJOGは、日本の臨床試験グループで、初めてがんの種類に関わらない臨床試験を実施する枠組みを持ち、数多くの医師主導治験を実施するグループとなりました。私は、WJOGの強みは歴史の長さにあると思っていますが、その一方、古い概念に縛られすぎないでしたたかな変化を許容する姿勢が、その継続性を支えていると考えております。
さて、WJOGの原点は、初代会長(理事長)の有吉寛先生が書かれている「束縛のない自由な発想に基づく臨床試験への願望と、その発想のpriorityを尊重する組織の確立」にあります。「束縛のない自由な発想に基づく臨床試験」、すなわち独創的で社会的に必要性が高いものは、様々なリソースに可能なかぎり縛られずに実施できる体制が必要だと考えております。そのためには、WJOG機能の拡充だけではなく、社会の共感を高めること、すなわち、患者さんをはじめとする臨床研究にかかわるステークホルダーと協調して歩むことが必要不可欠です。そのためには、WJOGはより外部に開かれた組織となる必要がございますし、患者団体をはじめとする外部団体・機関との協働にさらに積極的に取り組んでまいります。
組織機能の拡充につきましても、必要な臨床試験を制限なく実施するという観点から、積極的に推し進めます。特にGlobal Trialへの対応は必要不可欠だと考えております。今も複数のこの種の試験に参加しておりますが、まだまだ不十分です。WJOGがGlobal Trialで中心的な役割を果たすことができるように、機能強化に努めたいと思います。
「その発想のpriorityを尊重する組織の確立」については、これまでも積極的に行ってまいりました。その結果として、WJOGが実施する臨床研究の論文等の筆頭著者は、教授・部長クラスは少なく、若い研究者が務めることが多くなっています。しかしながら、Priorityを保証するだけでは、研究者から社会的に重要な臨床研究をWJOGに提案して頂けるとは限りません。私個人を振り返りますと、提案や意見を言う上で自由な発言が許されているWJOGの雰囲気に助けられた点が多々ございます。この若い研究者を尊重し忖度なく意見をいうことができる雰囲気は今後も堅持していきたいと思っております。また、現在も既に取り組んでいる若手研究者の育成プログラム(虎の穴、各臓器グループ内の若手グループ等)は、それをさらに充実させていきます。
最後に、日本のがん診療を持続的に進歩させ続けるためには、WJOGのような、質の高い臨床試験を実施できる臨床試験グループが必要不可欠です。今後とも、皆様方からのご支援を賜れますと幸いです。