委員会

呼吸器グループ

委員長よりご挨拶

この度、呼吸器グループ委員長を拝命致しました岡本勇です。私はWJOGの前身であるWJTOG時代からこの臨床試験グループに関わらせて頂き、まさにWJに育ててもらったと感謝しています。より優れた標準治療を開発する唯一の現実的な方法が、倫理的、科学的に妥当な臨床試験の積み重ねであること、臨床試験を立案、実行、完遂するには多くの気概ある研究者が一丸となって取り組まないといけないことを、WJの優れた先達の皆様の背中を見て学んできました。
難治疾患の診療に携わる医師は、少しでも良い治療法の開発に取り組む努力を常に要請されています。そんな中で自分に何が出来るのか?皆さんのバックグランドに関係なく、臨床・研究の場でがんばっておられる皆さんであれば、それぞれの立場で貢献できることがあります。WJOG呼吸器グループに加わって一緒に切り開いて参りましょう。

岡本勇委員長 写真
呼吸器委員会 委員長

岡本 勇

活動概要

WJOG呼吸器グループは、2000年にWJOGの前身となるWest Japan Thoracic Oncology Group(WJTOG)が発足した当初より、肺癌を中心とした胸部悪性腫瘍に関連した多くの臨床研究を行ってきております。切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準治療の確立につながった第Ⅲ相試験となるWJTOG0105試験や、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するEGFR-TKIを標準治療として確立することに寄与したWJOG3405試験など、世界における標準治療の確立につながる研究を多く行ってきました。

現在のWJOG呼吸器グループは、全国100以上の施設で構成され、今も多くの臨床試験および医師主導治験が進行中です。具体的な活動は、1か月に1回のアドバイザー会議および、年に4回程度の呼吸器グループ会議を開催し、日々新たな臨床試験の発案・検討・実施しております。

近年、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの様々な新規治療薬の開発により、胸部悪性腫瘍に対する治療は過去に例のない速さで進歩しています。WJOG呼吸器グループでは、この大きく変わる環境のなかで更なる胸部悪性腫瘍の患者さんにより良い治療を提供していくことを目指して今後も活動を続けていきます。

呼吸器外科部会の紹介

近年、手術可能な非小細胞肺がんにおける周術期治療に、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬が承認され、非小細胞肺がんにおける周術期治療は大きな転換期を迎えています。さらに、進行期の非小細胞肺がんにおいても、オリゴ(病巣数の少ない)転移やオリゴ増悪などの新たな病態が提唱されており、局所制御を目的とした手術が重要な位置を占めるようになっています。 これらの状況から、非小細胞肺がんに対する全身的治療である薬物療法と、局所治療である放射線や手術を組み合わせた集学的治療の重要性がますます高まってきており、2022年に呼吸器外科部会が立ち上がりました。

活発な意見交換会や勉強会を行っており、縮小手術を始めとした低侵襲性を考慮した外科治療の開発や、新たな周術期の集学的治療の開発する準備をおこなっており、患者さん、医療現場のニーズに応えられる臨床研究の立ち上げ、実施を推進しています。

また、我々は、ここ数年カナダやヨーロッパのグループと共同して、術後補助療法の開発に関与してきました。この経験を活かして、欧米のみならずアジア・パシフィックのグループ、施設との共同研究も進めて、日本の患者さんのみならず世界中の肺がん患者さんにより良い治療、診断技術を提供できるように尽力したいと考えています。

WING(WJOG呼吸器グループの若手会)のご紹介

WJOG young Investigators club for Next Generations (WING)は、WJOG呼吸器グループの若手会として2018年に発足しました。毎年、WJOGの中核を担うご施設の先生方のみならず、これからWJOGの中核を目指し頑張りたい野心溢れる先生まで幅広く募集し、任期は3年間です。現在のメンバーは、指導的立場にあるWING Steering Committeeを含め、計60名前後の呼吸器内科医・腫瘍内科医、呼吸器外科医、放射治療医で構成されています。

WINGは、臨床試験の立案・運営に積極的にかかわっており、これまでに関わった研究は30以上にのぼります。また、臨床試験への参加、症例登録の活性化、呼吸器グループ会議やアドバイザー会議への出席および発言、ASCO/ESMO virtual plenary抄読会をはじめとする様々な勉強会の企画・開催などを通じて、WJOGの活性化に寄与しており、いまや呼吸器グループの中核を担う存在となっております。

WINGメンバーで切磋琢磨し、 今後のWJOG呼吸器グループの発展と、より良い臨床研究に寄与できるよう日々努めています。

所属メンバー

  • Isamu Okamoto
    委員長

    Isamu Okamoto

    岡本 勇

    九州大学病院 呼吸器科

  • Hirotsugu Kenmotsu
    副委員長

    Hirotsugu Kenmotsu

    釼持 広知

    静岡県立静岡がんセンター
    呼吸器内科

  • Masahiro Tsuboi
    副委員長

    Masahiro Tsuboi

    坪井 正博

    国立がん研究センター東病院
    呼吸器外科

役職氏名施設名診療科名
アドバイザー / 理事長山本 信之和歌山県立医科大学呼吸器内科・腫瘍内科
アドバイザー菅原 俊一仙台厚生病院呼吸器内科
アドバイザー高橋 利明静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科
アドバイザー林 秀敏近畿大学病院腫瘍内科
アドバイザー三浦 理新潟県立がんセンター新潟病院内科(呼吸器)
アドバイザー津谷 康大近畿大学病院呼吸器外科
アドバイザー吉岡 弘鎮関西医科大学附属病院呼吸器腫瘍内科
アドバイザー田中 謙太郎九州大学病院呼吸器科
アドバイザー / WING代表池田 慧神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科

代表的な実績

WJOG6410L Hirohito Tada, et al.Randomized Phase III Study of Gefitinib Versus Cisplatin Plus Vinorelbine for Patients With Resected Stage II-IIIA Non-Small-Cell Lung Cancer With EGFR Mutation (IMPACT). J Clin Oncol . 2022 Jan 20;40(3):231-241.
J-SONIC Kohei Otsubo, et al.Nintedanib plus chemotherapy for non-small cell lung cancer with IPF: A randomized phase 3 trial. European Respiratory Journal(Accepted on March 18, 2022)
WJOG8715L Hiroaki Akamatsu et al.Efficacy of Osimertinib Plus Bevacizumab vs Osimertinib in Patients With EGFR T790M–Mutated Non–Small Cell Lung Cancer Previously Treated With Epidermal Growth Factor Receptor–Tyrosine Kinase Inhibitor West Japan Oncology Group 8715L Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2021; 7(3):386-394
WJOG5610L Takashi Seto et al.Randomized Phase III Study of Continuation Maintenance Bevacizumab With or Without Pemetrexed in Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer: COMPASS(WJOG5610L). Journal of Clinical Oncology 38(8):793-803, 2020

実施中の臨床試験

第III相STEP UP trial (WJOG16923L)

臨床病期IA3期の肺野末梢充実型非小細胞肺癌に対する肺葉切除と区域切除のランダム化比較第Ⅲ相試験

  • 目標症例数 : 520例
  • 登録期間 : 2024年01月~2029年01月
上垣内 篤
広島大学病院
呼吸器外科
Point
最近発表された大規模臨床試験(JCOG0802/WJOG4607L)により、肺野末梢の2 cm以下の肺癌に対しては、肺の切除範囲が少ない「区域切除」が従来の標準手術である「肺葉切除」と比較して予後が劣らないばかりか、優れることが示されました。肺癌以外の他病死が「区域切除」で少なく、肺の温存により身体への負担が軽減され、予後の向上に貢献したと考えられています。さらに、悪性度が高いと考えられている薄切CT上の充実型肺癌に対しても区域切除による生存利益を認め、2cmを超える充実型肺癌にも区域切除を適応できる可能性が示唆されています。一方で区域切除では局所再発のリスクが高まる可能性もあり、区域切除と肺葉切除のどちらが有効な治療法かは不明です。そこで本試験は臨床病期IA3期(2 cmを超え3 cm以下)の肺野末梢充実型非小細胞肺癌の患者さんを対象として、区域切除の臨床的有用性を、標準治療である肺葉切除と比較し評価することを目的としています。本試験の結果により、早期肺癌の患者さんに対し、より有効で身体への負担が少ない手術法が確立されることを期待しています。